The Evening Sun ・ The Morning Sun  with FinePix500
■ 夕日
夕日
 東舘7階の西側非常口は「立入禁止区域」であり、ドアの前には車イスが並べられ、不届き者の進入を阻んでいる。6階までは、問題なく出入りできるのであるが、7階だけこの様な措置を取っているのは、入院患者の種類に問題があるのかもしれない。
 あの日、5時過ぎに7階に登ったところ、珍しく非常口の前に障害物はなく、簡単にベランダへ出る事が出来た。ただ、出てから気付いたのだが、夕日を見るには、時間的に早すぎた。一旦病棟内に戻る事も考えたが、非常口を出入りしている所を看護婦に見つかるのが嫌だったので、ベランダで日が沈むのを待っていた。この時、西舘の窓からの視線を気にし、南端の角で待っていたのだが、これがいけなかった。後ろから話し声が聞こえる。ふり返ると、701号室の暇なおっさん達が、私を見付けて騒いでいたのだった。(4階の同位置の部屋に入院していた時は、窓の外など気にしたことも無かったので、まさか、ベランダに人がいることで、入院患者が騒ぎだすとは思ってもいなかった。)で、あわてて角の向こうに隠れたら、これは、もっといけなかった。今度は看護婦達が血相変えて走ってきた。この階の人間には、「夕日をボケーッと眺めている」なんて行動は理解されない。
 もっとふてぶてしく、堂々としていれば良かったのだが、立ち入り禁止区域に立っているという負い目があり、それが、さらに事態を悪い方に引っ張った。
「どうしましたあ」
 と走ってくる看護婦に、返す言葉もなく太陽を指さしたら、
「西舘から来たんですか」
 と、勘違いされる。仕方なく、なんとか誤魔化そうと出た言葉が
「ど、どうかしたんですか?」
 いかん。動揺して、どもってる。
「夕日を見ているだけです。何か問題あります?」
 などど、とぼけていたんですが、これじゃあ、らちがあかない。困ったあげく、
 「直ぐ戻りますから」
 を連発して、なんとか引き上げてもらった。どうも、西舘から来た知的障害者と勘違いされたような気がする。(確かに、我が407号室でさえ普通の会話ができる人間がいないのであるから、7階においては、いた仕方ない事であろう。)
 直ぐ戻るとは言ったものの、なかなか日が沈まないので待っていると、今度は看護婦が3人も飛んで来るわ、701号室が再度騒ぎだすわ。その後も色々あったのだが、何とか誤魔化しきって、2枚ほど撮影することに成功した。
 もう、当分は、東館7階に近づきたくなくなった。

■ ついでに 朝日
朝日
 4月というのに雪が積もりました。ようやく歩けるようになったので、病院を抜け出して、河辺を歩いてみました。



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