私の1アマ受験記

はじめに
 アマチュア無線の学科試験において、4級と3級では、どちらが難しいか?
 実は、4級なんです。常識的に考えれば、3級の方が上級資格ですから、難易度は上がり、その分難しくなると考えがちです。でも考えて下さい。4級の受験者数は、3級の受験者数よりも遥かに多いのです。これは、頻繁に試験を行っている事からも解ります。そのため、4級は、必然的に出題パターンが多いのです。
 つまり、3級は4級よりも出題範囲は広いのですが、出題パターンが少ないのです。これは、覚える事が、それだけ少なく成ることを意味します。それゆえ(出題される問題は、ほぼ解っている訳ですから)3級の方が易しいのです。
 さて、それでは1〜2級についてはどうでしょうか?
 さすがに、1〜2級は難易度が上がるので、(素人では)一筋縄に行かないと思います。しかし、考えてみて下さい。1〜2級は、3〜4級よりも、遥かに受験者数が少ないのです。ということは、出題パターンが少ないのでは?
 そこに目を付けたグループがいました。そして、そのグループは、本まで出していたのです。
 実は、私が1アマを受験したきっかけは、この本でした。実力が伴わなくても合格可能な現代の受験システム。疑問も感じますが、これが現実なのだから、せいぜい利用するのも得策かも知れません。というわけで、物は試しに受験してみました。
 それにしても、この本を発行したCQ出版社、結構悩んだだろうなあ。

 以下、この本の利用記を報告します。もし、受験してみたいと思う人がいたら、参考にしてくれると幸いです。

1. 暗記だって結構大変。
  勉強方法としてこの本を使うのは、大変効率が良い様です。基礎から順に入る従来の教科書に比べ、覚えるべき内容のみ整理されているため、比較的短時間で最後までたどり着く事が出来ます。とはいえ、腐っても1級試験。私のような凡才者には、1ヶ月は必要でした。

2. この本のヤマは当たるのか?
  この本が発売されてから、すでに何回かの試験が行われています。このような本が発売されてしまった(公になってしまった)以上、問題の作成者も、何らかの対策(新規問題)をとると思われます。実際、私の受けた試験問題からいえば、この本で見なかった問題がかなり出題されている様でした。よって、この本だけでの一発合格は難しいかもしれません。対策本と試験問題とはイタチごっこの関係になると思うので、望ましくは最新の出題傾向も整理し、追加勉強する事をお奨めします。

3. みんなこの本知ってるの?
  受験会場で周りを見渡してみると、この本を片手に、ラストスパートをかけている受験生を数人見つけました。この本が出版されることにより、きっと受験者数が増加したと思います。

4. 工学試験中の様子についてちょっと
  2でも書きましたが、思ったよりも同一の問題が少なかったようです。となれば、自分の持つ知識を総動員し、正攻法で問題を解かねばなりません。つまり、解答を出すには、それなりの時間が必要となります。ところで、試験時間は2時間ですが、30分を過ぎると退室出来ます。
 この日は実際、そこで数人,1時間を超えた辺りで半数以上が退出しました。(腹が減ったのか、午後からの電信試験対策に余念がないのか?) 必死で計算している私をしり目に、人数がどんどん減ってゆきます。みんな、なんでそんなに早く答案ができ上がるの?
 残り30分の時点で、教室内には私を含めて3人残っていました。 私の前後に一人ずつです。しばらくして、後席の人が退出します。前席の人が、不安そうに後方を確認しています。そして、教室内の緊張が高まってきました。私は段々緊張に耐えきらなくなり、結局、終了の10分前に退出しました。その時、残された一人が、寂しそうに私を見ていたのが印象的でした。
 今にして思えば、早々に退出した人の中には、”問題を見て諦めたという人もいる”という可能性がある事に気付きました。試験の合格率から考えて、その人数は少なくないと思います。しかし、あの時は、ただ焦るばかりでした。

5. 電気通信術
 上級資格を取ろうとする人が少ないのは、モールスに原因が有ると思います。少なくとも、私はそうでした。
 今やモールスは、アマチュアでしか使われないのだから、必要ないと思う人も多いでしょう。でも、”アマチュアだから残ってる技術”があるのも、アマチュア臭くて良いと思います。
 さて、それが必要な技術であるか否かはさておき、受験にモールスは必須科目です。でも御安心。何しろ、私でさえ合格できたのですから。”あんちょこ”は無いけれど、試験に合格できる程度の学習であれば、さほど敷居は高くないですよ。試験に出た問題は、私がカセットで練習したそれよりもゆっくりだったし、受信文(解答)が文になってなくても、”事実上大きな問題とはならない”ようです。 はっきりいって、”ひょうしぬけ”でした。
 アドバイスとしては、試験前にはあまり練習しない事。私は、ついつい練習しすぎてしまい、おかげで試験中手首が疲れて動かなくなり、何文字か落としてしまいました。カセットで十分に練習すれば、この試験は必ず取れると断言できます。

6. 許せない合理化

 おかしな制度になってしまいました。試験合格のあかつきには、”免許申請の手続き”とあい成るのですが、その書類が有料なのです。それだけならまだしも、その書類は試験場だけでしか売っていないのです。(合格発表は当分先の話なのに。)
 合否ボーダーラインの人たちは、購入するか否か悩む事でしょう。(実は、私の事)後から取り寄せる事を考えると......やはり購入せざるを得ないのでしょうねえ.....。

最後に...

 ところで、これを活用して得たライセンスは、真の実力を示すか? と言う問題ですが、私の場合、合格通知を見ても、素直に喜べない一面が有ったし、”胸を張って1級です”とは、ちょっと言いにくかったです。
 でも、この本が出たことにより”1級チャレンジの決心”をすることが出来た人は少なくないはず。また、私も結局は普通の教科書を買ってきて追加勉強してしまった事を考えても、それなりの意味はありそうです。まあ、アマチュアの資格ですから良いとしましょう。

 今回の試験は、内容の理解よりも試験のテクニックが要求される現代の受験制度問題について考えさせられました。

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